回復期病院で見上げた空

かんブログ

近くにあるけど遠い窓

8月に入院して、ギランバレー症候群で寝たきりになり、
暫くの間、窓際に近づくことすら出来なかった。

ブラインドの隙間から、日光が差し込んでくる。
その光すら、視神経にも影響が出た私には
眩しすぎて、目にささる感じがして。
ブラインドをあけることも断っていたのに、
近づくなんて、出来たとしてもとんでもなかった。

OT(作業療法士)と外へ。

季節が秋になり、ようやく私は外に出た。
治療を行う急性期病院の、OT(作業療法士)の先生が
外に連れだしてくれたのだ。

まだ立つことは出来ず、車イスだったけど
病室からリハビリ室にわざわざ起こして連れて行ってくれ、
その途中で病院の入口から外へ。

玄関近くのベンチがあるところで、外の空気に触れながら
色々とたわいもない話をした。

知らない間に季節が変わり、半袖では肌寒く感じる様に
なったんだなと驚きつつ、久しぶりの自然の風が心地よく、
毎日のOTの時間が楽しみになっていた。

時間的に母が来る時間と重なる日もあった。
病室に来て、まだ母が来ていないと知ると
「迎えに行こう!」と、OTが私を連れ出す。

「え~」と言いながら、張り切って車イスを押す
OTに笑いが止まらず、2人で笑いながら母を待った。

「あ、あれじゃない? お母さ~ん!」
OTに手をぶんぶん振られて、ビックリした顔で
急いでくる母。そりゃそうなるよね。

一緒にリハビリ室に向かいながら、
「お母さん捕獲成功!」みたいに言ってたっけ。

でも、その頃になっても、私が空を見上げることはなかった。
相変わらず光に極端に弱かったし、眩しいから
伏目がちで、晴れた日は目を瞑りがちだった。

首はだいぶ座ってきて(赤ちゃんの様だけど)
動かす事は出来たけど、何故か見られなかった。

渡り廊下越しの空

更に1ヶ月以上経ち、季節は秋。
リハビリをする回復期病院に行って、少しずつだけど
自分で出来る事が増えていった。

車イスから歩行器になり、装具もなくゆっくりなら
歩けるようになった。
付き添い付きでのリハビリ室への移動が、
自分だけで行くようになり、足、手、顔面神経麻痺の
リハビリ加えて、学校の体育の様な運動の時間も増えた。

その時期になって、ようやく私は空を見た。
といっても、見上げたわけじゃなく、
体育館に向かう、2階の渡り廊下の窓からの空。
雲一つない、青空だった。

その時、急に気が付いた。
見ることは出来たのに、見ようとしてなかったなって。
何故かは分からなかったけど。

その後は、同じ渡り廊下から空を見た。
曇りも雨も、晴れの日も。
でも気持ちが揺れ動くことはなかった。
今日の天気は〇〇か、位。

流れで見上げた空と、それから

それからまた2ヶ月経って冬になり、
回復期病院退院の日を迎えた。

入院していた病棟の食堂の窓から
看護師さんやいつも一緒に食事を摂った
入院仲間が手を振ってくれていた。

見上げて手を振り返して、そのまま視線が空へ。
記憶違いでなければ、晴れて青空だった。
キレイだなと素直に思ったけど、
急に寂しさがこみあげて来た。

回復期病院の生活は、私には宝物の様で
楽しくて、あっという間で、色んなことを教えてもらった。
PT、OT、STの各療法士の先生もみんないい人で
看護師さんも、皆いい人で。

明日から、家に帰ってもどうしたらいいんだろう。
通院リハビリはまだ続くけど、家でちゃんとやれるのだろうか。

近所の人は、急にいなくなって戻って来て、
こんな麻痺で歪んだ顔を見て変に思わないだろうか。
一日寝てばかりいて、家族にも負担をかけでしまうな。

一気にいろんなことが押し寄せてきて、不安で泣きそうになった。
皆が見送ってくれたのもあったけど、不安で不安で仕方がない。

冬の晴れた空が苦手になった。

その日以来、冬に晴れていると、青空が辛い。
出来る事が増えても、今もその気持ちが急に襲ってくることがある。

戻って良かったのか。
周りに負担をかけているんじゃないのか。
入院してくれていた方がって思われてるんじゃないか

自分の後遺症と付き合いながら生活するのも大変だけど、
実は自分がつい考えてしまう、それが一番辛かったりする。

治療は終わったし、リハビリにも行かない。
「あとは生活しながらご自身で頑張ってください」
みたいに言われるし、飲み薬もないけど、
元には戻ってないし、目には見えない後遺症もあるんだ。
見た目には分からないし、説明も難しいけれど。

弱い私は、空はまだ見上げられない。
晴れた夏の日も、動けなくなった日を思い出してしまうし、
冬は急に不安が襲ってくる。

キレイな写真を見るのが精いっぱいだけど
このままの自分でいいんだと思える日が来て、
空を見ても、素直にきれいだと思える日は来ると信じる。
いつかきっとと思っている。

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